前回は、花粉症の治療法について全体をご紹介しました。
本日はその治療法の中の「手術」についてもう少し見ていこうと思います。
えっ?花粉症の手術?
最近は耳鼻科で花粉症の手術を行っているところが増えていますがご存知でしょうか?
日本では3人に一人が花粉症と言われるほど、花粉症の症状に悩まされている人が多いです。特に多いのが、山梨県や静岡県、埼玉県という調査結果があります。
鼻水やくしゃみ、鼻詰まりが続いたりひどくなると、集中力が落ちたり夜に眠れないなど生活へ支障が出てくることもあるでしょう。
例えば仕事で運転をする方や、受験生、妊婦さんなどにとっては、深刻な問題にもなり得ます。
そのような場合は手術という選択肢もあります。手術もいくつか種類がありますので1つずつご紹介していきます。
下鼻甲介粘膜焼灼術
花粉症の症状が悪化して、内服薬や点鼻薬など薬物療法で十分な効果が得られない方を対象に、下鼻甲介粘膜焼灼術という選択肢があります。これは鼻の中の下鼻甲介粘膜を焼灼しアレルギー反応が起こりにくくする方法になります。
鼻の中の空気の通り道を狭くしている下鼻甲介という部分の粘膜を焼灼し、粘膜の質を変えることで鼻づまりやくしゃみ、鼻水などの症状を和らげられます。
鼻粘膜を焼灼する方法には次の3種類があります。
レーザー治療(鼻腔粘膜焼灼術)
レーザ治療は、下鼻甲介粘膜を点で焼いていく治療方法です。そのため均一に焼灼するためには少し時間がかかります。レーザー治療は他の2つよりも費用が割高となっています。
レーザー治療は水分があるとうまく焼灼できないため、鼻水が出るときには向きません。
手術後3日目までは焼いた箇所がかさぶたになり鼻づまりがつらいですが、治療の効果は1〜2年くらい続きます。
アルゴンプラズマ凝固療法(APC)
アルゴンプラズマ凝固療法とは、アルゴンプラズマ凝固装置を用いて高周波電流をアルゴンガスとともに流し、下鼻甲介粘膜を凝固させることで鼻粘膜のアレルギー反応を軽減させる治療です。
3種類の焼灼方法の中で、一番効果が高いと言われる方法になります。
レーザー照射と同様に鼻粘膜を焼灼しますが、点ではなく面で焼灼するため、レーザー治療に比べて均一な深度で広範囲へ行うことができ、手術時間も短いのが特徴です。
またアルゴンプラズマ凝固療法の場合は、鼻水が出ている時でも少量なら治療を行うことが可能です。
レーザー治療と同様に、手術後3日目まではかなり鼻づまりがつらいですが、治療の効果は1〜2年くらい続きます。
トリクロール酢酸手術(TCA)
トリクロール酢酸手術は下鼻甲介粘膜にトリクロール酢酸という薬液を綿棒で塗布して焼灼することで、アレルギー反応を起こしにくくさせます。
トリクロール酢酸手術も点でなく面で焼灼するので、均一に早く治療が行えます。
また、レーザー治療と同様に水分があるとうまく焼灼できないため、鼻水が出るときには行えません。
術後の鼻づまりは比較的軽く、3日~7日程度で治ります。ただ手術の効果は他の2種類ほど持続せず、3~6か月程度となります。
日帰りで受けられて、負担も小さい
下鼻甲介粘膜焼灼術はどれも当日の治療自体が20〜30分ほどで終わりますので、日帰りで手軽にできるというメリットがあります。
治療の流れとしては、初めに麻酔液を染み込ませたガーゼを鼻の中に入れ局部麻酔をかけてから、粘膜を焼灼をしていきます。そのため痛みもあまりないので安心でしょう。強いて言えば麻酔のガーゼを鼻の中に入れる時に、ガーゼの擦れで少し痛みを感じることがあるようです。
また大人だけでなく子供も下鼻甲介粘膜焼灼術の治療を受けることができます。効果が薄れると受け直す必要がありますが、繰り返し何度か行うことで効果が高まると報告されています。
気になる治療費についてですが、下鼻甲介粘膜焼灼術はどれも保険適応になります。
アルゴンプラズマ凝固療法とトリクロール酢酸手術は3割負担の場合に6,000円前後ですが、レーザー治療は約1.5倍で9,000円ほどになっています(診療費やお薬代は別途必要です)。
また治療を行った日の注意点として、激しい運動や入浴は禁止されますが、車の運転などは可能です。
手術後ですが、鼻の粘膜が腫れて落ち着くまでに10~14日間かかります。術後2週間は処置のために1〜2回通院する必要があります。
花粉症というのはアレルギー体質の人が起きやすいといわれている免疫が原因の病気ですから、鼻のアレルギー部分だけを抑えても完全に花粉症の症状がなくなるというわけではないということは覚えておきましょう。
粘膜下下鼻甲介骨切除術
粘膜下下鼻甲介骨切除術は、鼻の穴から器具を出し入れして粘膜または下鼻甲介の骨を切除して鼻通りをよくする手術で、保険も適応となります。粘膜下下鼻甲介骨切除術は3割負担で約11,000円ほどになっています。
物理的に総鼻道を広げるので空気の通りがよくなって鼻詰まりなどの症状が軽減され、血流も減ることでアレルギー反応が起こりにくくなります。
手術は局所麻酔をしてから行うので術中の痛みはあまりありませんが、術後は鼻の中にやや腫れの痛みがあります。しかしその痛みも消炎鎮痛剤によって抑えられる程度のものなので安心できると思います。
また手術後はしばらく出血や鼻づまりが続いたりしますが1~2週間で落ち着き、治療の効果は2〜3年間持続するようです。
粘膜下下鼻甲介骨切除術は日帰りでも可能ですが、当日は安静にする必要があったりするため、1泊入院を勧められることもあるようです。
後鼻神経切断手術
後鼻神経切断手術は、後鼻神経というアレルギー物質を感知したり、鼻水を分泌したりする神経のアレルゲンに反応する神経のみを切断する手術で、保険も適応されます。後鼻神経切断術は3割負担の場合で、約92,000円くらいになっています。
手術は眠くなる点滴と局所麻酔をしてから行います。所要時間は片側だけで約20分程度なので、術前の点滴も含めて1時間ほどです。
粘膜下下鼻甲介骨切除術も同時に勧められることも多いですが、両方行うことで90%以上の患者さんの症状が改善したと報告があるそうです。
後鼻神経切断手術は優れた効果を得られますが、デメリットとして下鼻甲介の機能(鼻汁分泌、知覚)が低下することがありです。そのため、術後長期間経過すると萎縮性鼻炎に移行する場合があるという報告もあります。
また手術は日帰りも可能ですが、粘膜下下鼻甲介骨切除術と同様に入院を勧められることもあります。
おわりに
この特集ページでは、テーマごとに連載形式で投稿していきます。
こちらの特集では花粉症に関するさまざまな情報について、網羅的に記事にしてご紹介をさせていただきます。
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